虫について

僕は虫が嫌いだ。というか苦手だ。ゴキブリなんかもってのほかだ。見たくもないし触るなんてとんでもない。できれば今後一生出くわしたくない相手だ。唐突に羽ばたくところが嫌いだ。ちょっと湿ってテカテカしてる羽を見ると背筋がゾクゾクする。幸いなことに、今まで僕はゴキブリとはほとんど顔を合わしたことがない。でも夏が近づいてくるとカメムシと遭遇することが多くなる。こいつも嫌いだ。ちょっとでも刺激を与えると、すんごく変な匂いを撒き散らすから嫌いだ。ティッシュで掴んで外に捨てるのはいつも一苦労だ。ティッシュをそーっと伸ばしてやっと上に乗ったと思ったら、そのまま僕の方に近づいてくるお調子者なところが嫌いだ。とにかく僕は虫が嫌いだ。というか苦手だ。でもこんな僕でも好きな種類の虫がいる。それはカブトムシとクワガタだ。こいつらには小さな頃の思い出が詰まっている。だから今でも好きだ。夏になってカメムシに会うのは嫌でたまらないが、あいつらに会うのは今でも楽しみだ。
僕の小さな頃の夏休みの日課は、カブトムシやクワガタを取りに出かけることだった。夏の暑い日ざしの中、毎日毎日飽きもせずに近所の林の中を歩き回ったものだ。あいつらはクヌギやコナラなんかの雑木林に生息していて、幸運なことに僕の家の周りはそんな木ばっかりの田舎だった。だから僕は都会の子供たちとは違って、田舎ならではの貴重な時間を思いっきり満喫できたんだ。当時の僕からすれば、カブやクワ*1はキラキラ輝く宝石のような存在であり、彼らからは何が何でも手に入れたいと思わせるような強烈な魅力が発せられていた。
早朝5,6時に目を覚まし、ラジオ体操よりも先に近所の雑木林にあいつらを探しに行く。これが何よりの楽しみだった。僕の獲物は木の樹液が大好物だ。たまに全然関係のない場所で見つけることもあったけど、大抵は樹液を吸って油断しているところを捕まえるんだ。スイカの皮を罠として設置しておくのも中々効果的な作戦で、この方法はハマれば相当な収穫を得ることができた。ただし、スイカの皮作戦には、誰かに自分よりも先に罠を見つけられると、獲物を横取りされてしまうという致命的な欠陥があった。それに何より、当時の僕は自然を愛するよい子ちゃんだったので*2、スイカの皮で林を汚すことには嫌悪感を抱いていた。だからセオリー通りというかバカ正直にというか、地道に木にくっついているやつを探して回るというのが僕の常套手段だった。

全然きりがよくないんだけど、眠たくなってきたので続きはまた今度。

*1:僕の周りではあいつらのことをこう呼んでいた

*2:今は違うってわけじゃない。でも子供の頃にはとても敵わない。